内視鏡下調節性バルーン留置術
四谷メディカルキューブ 減量・糖尿病外科センターでは胃内視鏡を用いた肥満症治療として内視鏡下調節性バルーン留置術を行なっています。
内視鏡下調節性バルーン留置術とは
胃内視鏡(胃カメラ)を用いて胃の中に400-700mlのバルーン(風船)を留置する術式のことです。バルーンを留置することにより満腹感を得られるとともに、胃容量を小さくすることで食事摂取量を減らし、効果的に体重を減少することができます。胃内バルーン治療は以前から行われていましたが、非調節性であること(一度、胃内にバルーンを入れると後に容量調節が出来ない)、留置期間が最長6ヶ月と短いことなどの問題点がありました。
当院で使用している胃内バルーン治療では「Spatz3」という器具を用います。正式なトレーニングを受けた医師のみが使用することができます。胃内バルーン治療は減量外科治療の一部として位置づけられており、緊急時に肥満の患者さまに対して腹腔鏡による適切な対応が行える施設、すなわち減量外科手術を行っている施設で治療することが推奨されています。また、最良の結果を得るためには、管理栄養士や運動トレーナーなどチーム医療体制下で治療が行われることが必要です。
Spatz3の特徴
1)胃内視鏡を用いて挿入、摘出する(外科手術ではない)ため、体にきずがつかない。
2)バルーンの大きさ(容量)を調節できるため、吐き気など副作用で苦しい時に容量を小さくしたり、体重減少が滞った時に容量を大きくしたりできる。
3)留置期間が最長12ヶ月と、従来の2倍の治療期間をとれる。
4)麻酔は静脈麻酔、全身麻酔の選択が可能です(麻酔科医との相談で決めて頂きます)。
適応(治療の対象となる方)
当院の適応条件
1)年齢20歳以上65歳以下
2)初診時のBMIが27以上
3)肥満に関連する合併疾患を有していること(美容目的で行うことはできません)
過去に胃の手術を受けている、血が止まりにくくなる薬剤(抗凝固薬など)を服用されている、妊娠中またはバルーン留置期間中に妊娠を計画されている、ピロリ菌感染があるなど、本治療を行うにあたってリスクが高いと考えらえる場合は適応とならない可能性があります。詳しくは外来診察時に担当医に直接おたずね下さい。
身長と体重を入力すると、あなたの肥満度がわかります。
効果と限界
最も高い効果が期待できるのはBMI27~30程度です。手術の適応となるような高度肥満でない方です。期待できる減量効果はおよそ5-20kg(平均約10kg)です。肥満に伴うさまざまな合併疾患の改善が期待できます。中にはそれ以上体重を落とされる方もいます。減量効果に関して内科治療(食事、運動療法など)のみよりも高い効果が期待できるものの、手術と同等の効果を得ることは一般的には困難です。手術は怖い、体にメスを入れるのは抵抗があるという方に関しては、BMI30を超えている方であっても本治療を受けることは可能ですのでご相談下さい。留置後12ヶ月経過すると取り出す必要があります。取り出した後に、適切な生活習慣が身についていなければリバウンドの可能性があります。
副作用・危険性
胃内バルーン治療に伴い重篤な合併症や有害事象が発生することは極めてまれですが、起こり得る合併症・有害事象としては以下のものが挙げられます。合併症・有害事象は、適切な治療が行われれば重症化を防ぐことが多くの場合可能です。
早期抜去(5%未満)/胃潰瘍(1%未満)/消化管出血(1%未満)/通過障害(1%未満)/消化管穿孔(1%未満)/膵炎(1%未満)/肺炎(1%未満)/死亡(約0.01%)
最も多い副作用として、バルーン留置後早期(数日間)、比較的強い吐き気が出現します。点滴や強めの吐き気止め(制吐剤)を必要とすることがあるため、当院では2泊3日の入院を設定しております。吐き気は通常、留置後数日で消失します。胃内にバルーンが入っている間は、胃潰瘍を予防する目的で必ず胃薬を内服していただきます。
費用
その他
当院で本治療を導入するにあたり、減量・糖尿病外科センターの関 洋介医師が本治療を受け、安全に留置するための
手技や留置後の吐き気止めの使い方について検証しました。留置ならびに、その後の経過に関しては、ブログに掲載
しております。是非ご参照ください。